社会福祉法人碧晴会　川口結いの家で働くみなさまには、まず施設の理念「思いやる心とこころ　暮らしを紡ぎ地域と結ぶ　一人ひとりが支えあう　川口結いの家」を胸に抱いていただきたいと思います。理念こそが施設の方針だからです。
　この施設の運用は大きな船の航海に似ていると感じます。人生の最終航路となる乗客をお乗せし、乗務員が力を合わせ、安全に快適に、紡ぎつづけられる日々の生活の海を静かに悠々と航行する航海を思い浮かべているのです。
　船が沈没したり座礁したりしないためには、運行組織を堅牢にし、安全を図り、指揮系統を明確にしなければなりませんが、一人ひとりの生活者をお乗せしていることを考えれば、まず、やわらかで思いやりのあるきめ細やかな現場の力が望まれます。
　船の行く先を遠望し舵をとる人、乗客のお世話をする人、食事や身のまわりの日常の支度をする人、医療や看護に携わる人、そのどの一つが欠けても支障がでます。また、スタッフの個々のモチベーションは大切ですが、自分の役割は他の役割といつも連携しているとの認識が必要で、そうすれば互いに協調し自らの仕事の役割が分かってくるのだと思います。
　そして、介護をする人もされる人も、人生という大きな海原を航行しながら、今を一緒に生きている人間同志なのだという思いが、意識の壁を取り去り、普通の生活の在り様のなかで、優しく人をお世話することができるようになるのではないかと思うのです。
　人生の先輩をお世話するのですから、人の尊厳を想う知力と想像力が求められます。ただ単に、仕事としてではなく、自らの勉強と人生の修養を、この川口結いの家のなかで汲み取る姿勢を養ってほしいと願っています。

社会福祉法人碧晴会 理事長　堀尾 靜